磐田市のはだし教育
学校単位ではなく、自治体が中心となってはだし教育推進に取り組んだところもあります。ここで紹介するのは、静岡県磐田市の事例です。
朝日新聞のバックナンバー(1987年5月30日・静岡版)に「けが・かぜ減り子供らに活気 はだし教育10年の磐田市立中部小」という表題で以下の記載がありました。
同小が、はだし教育を始めたのは五十二年秋。当時、児童が外で遊ばなくなったり、簡単にかぜをひく傾向が出たため、体力作りの意味も含め、校長の発案ではだし教育を導入した。靴をはくのは、登下校の時だけで、あとはすべてはだしで過ごしている。また、毎朝、始業前の「おはよう駆け足」や、全校児童が週三回、校庭や体育館で、はだしでボール運動や体操などをしている。学校側では、足洗い場を設置したり、渡り廊下のコンクリートの上に凹凸面のあるゴム製のカバーを敷き、"竹踏み通路"にするなどの工夫をしている。同小の活動がきっかけとなり、いまでは同市内の幼稚園、小中学校すべてで、はだし教育が行われている。
注目すべきは、市内すべての小中学校ではだし教育が行われていたという点です。具体的にどのような活動が行われていたのか、この点について詳しく調査てみしました。
次に紹介するのは、「たくましい体力と旺盛な気力」磐田市教育委員会(1990年)という文献です。
磐田市では、1977年から磐田中部小学校でのはだし教育がスタートしており(当初は校内、1981年からは校舎内外ではだし)、この取り組みを他校にも水平展開する、という流れだったとのことです。そのため、自治体の中には「はだし研究推進部」なる組織ができたようです。
この文献の中に「はだしの活動の各校のあゆみ」と称して、各小中学校のはだし教育の開始時期、はだしになる期間、そして場所がまとめてありましたのでその内容を以下に紹介します。
学校名 |
開始時期 |
期間 |
場所 |
磐田北小学校 |
1985年 |
5~9月 |
外、体育 |
磐田中部小学校 |
1977年 1981年 |
4~3月 4~3月 |
内 内、外 |
磐田西小学校 |
1984年 1986年 |
6~10月 |
一部内 外、体育 |
磐田南小学校 |
1982年 1986年 |
5~11月 6~11月 |
一部内、外 内 |
東部小学校 |
1981年 1986年 |
4~11月 4~12月 |
内 内 |
大藤小学校 |
1986年 |
6~10月 |
内 |
向笠小学校 |
1984年 1986年 |
6~10月 |
一部内 内 |
長野小学校 |
1983年 1985年 |
4~10月 4~10月 |
内 内、外 |
岩田小学校 |
1983年 1984年 |
9~11月 5~11月 |
内 内 |
田原小学校 |
1982年 1983年 1983年 |
10月27日~ 4~3月 3~11月 |
内 内 外 |
富士見小学校 |
1983年 |
4~10月 |
内 |
磐田第一中学校 城山中学校 向陽中学校 神明中学校 南部中学校 |
1983年 |
|
一部体育時 |
この文献に注釈は無いのですが、場所の「内」というのは校舎内、「外」は校庭、を意味しているのだと思います。中学校については、どこの学校も共通で、一部体育時にはだしになっている、ということだったのだろうと思います。
冒頭の文献で、市内全小中学校ではだし教育を実施、と書かれていたのですが、実際のところは、小学校では校舎内外で幅広くはだし教育が行われていたのに対し、中学校でのはだし教育は一部の体育にとどまっていた、というのが実態のようです。
中学校でのはだし教育については、当時学校に対して行っていたアンケート調査の回答例として、「たくましい体力と旺盛な気力」の中に以下のような記載がありました。やはり、思春期の生徒たちに一律ではだしを要求するのは難しい、という判断だったようです。
1.はだしを実践して良かったと思われる点(1984年度回答)
体育館で足が滑らず、活動しやすい
のびのび動いている
足について自覚を持ち始めた
気持ちがいい
2.はだしへの考え方(1988年度回答)
思春期を迎え発達段階で難しい時期にある中学生の実態や、足洗い場などの設備・運動場の小石混じりの土質状態、また父兄への啓蒙の難しさなどから、中学生の段階では一度に全校体制でのはだしの生活をするにはやや無理があると判断し、中学生のはだし教育を推進するには教科中心での取り組みを考えるのが最初ということで押さえている。
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和木町立和木中学校
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2022年12月25日公開