2時間目の授業が終わり、休み時間になりました。さっきの数学の授業中、黒板に書かれた問題の答えをわたしが書かないといけなくて、前に出ているときに、数学の先生に「なんで上履き履いていないんだ」って聞かれました。さすがに「上履きが汚くてクサくて履けないからです」とは言えませんでしたので「ハダシのほうが気持ちいいんです」って言ったらそれ以上突っ込まれませんでした。
ところで、この2時間をハダシで過ごして気づいたことは、机の前にあるパイプに足を載せると、足の裏がひんやりして気持ち良かったということです。あと、そのパイプに親指と人差し指の間を挟むと、これも指の股に刺激があってなかなか良い感じでした。わたしは数学が苦手なので、いつもはすぐに眠くなっちゃうんだけど、今日はそんな風に足の裏を刺激していたので全然眠くなりませんでした。これで成績もよくなるといいんだけどな。
それから、授業中に周りの席を見たら、結構上履き脱いじゃっている子も多くて、足が痒いのか指をくねくね動かしているのが靴下の動きで分かったりするんだけど、そんなに痒いんならわたしと同じように靴下なんて脱いでハダシになっちゃえば良いのに、なんて思ったりしました。ハダシなら両方の足の裏をダイレクトに擦り合わせることができるので、足の痒みなんてあっという間に解消です。
休み時間はまだ残っていたので、わたしは椅子に座ったまま片方の足を持ち上げ、自分の足の裏をじっくり見てみました。よく見ると、親指には髪の毛のようなものが絡まっています。それが窓から入ってくる風に吹かれてゆらゆら揺れていました。他には、教室の中にあった埃でしょうか、それらがべったりとついて足の裏全体をグレーに変色させていますが、それでいて土踏まずの部分には埃はついておらず、もとのきれいな色のままです。
前に「土踏まずがあると足が疲れなくて健康」みたいなことを読んだことがあったけど、こうしてみると、わたしの足の裏は結構健康的できれいな形をしているのかもしれません。
埃のほかには、白やピンクの点々とした汚れがついていましたが、これはさっきの授業中に黒板の前に出たとき、チョークの粉を踏んでしまったものでしょう。
そんなすっかり汚くなった足の裏をみていると、ふいに「こんなに汚くなっちゃって、ニオイもクサくなっているのかな?」と気になってきました。わたしは周りを見渡してから、足指の股のところを手の指でごしごし擦り付け、その指をそっと鼻のところに持っていき、クンクンしてみました。「あれ、全然クサくないや」と思ったそのとき…
「…ちゃん」「陽菜ちゃん」
顔を上げると、結衣ちゃんが驚いたような表情でわたしの前に立っていました。
「陽菜ちゃん、いま自分の足の裏のニオイかいでた??」
どうやら、一部始終を結衣ちゃんに見られていたみたいです。恥ずかしい…
「陽菜ちゃん、足クサかった?」
「ううん、クサくなかったよ。足の裏はゴミだらけで汚いけど、汗とかがすぐに乾いて蒸れないからクサくないのかも」
「へぇ、ちょっと陽菜ちゃんの足の裏見てもいい?」
そう促されるままに、今度は結衣ちゃん顔の前にわたしの足の裏を差し出します。
「うわぁ。ゴミいっぱいついてる!」
「でも、足の裏がスースーして気持ちいいし、授業中も全然眠くならなかったんだよ」
「まあ、そうかも、だけど、やっぱり結衣には無理かな。変な虫とか画びょうとか踏んだら嫌だし」
そんな会話をしていると、3時間目の始業のチャイムが鳴りました。
仕事終わりに図書館に行ってみると、学習室で制服女子高生が勉強中だった。髪型は黒髪ポニーテール、服装は白のYシャツに紺のベスト、それに紺のスカートという恰好。清楚で真面目そうな感じが伝わってくるような子だったのだが、足元を見ると素足のまま中途半端にローファーを履いている。そのローファーもまた、光沢感のあるきれいな黒色だったので、全体を通して唯一、靴下を履いていない点だけがルーズな感じで、真面目そうな外観とのギャップに私はドキドキしてしまった。私はその様子を、斜め後ろの席から観察することにした。
女子高生が素足でローファーを履いている、という状況は「大雨で靴下が濡れてしまった」ということが考えられるのだが、今日は朝から終日良い天気だったのでそういうことでは無さそうだ。それに、彼女の周りに靴下は見当たらない(もしかしたら、ここに来るまでの間も素足にローファー履きのまま来たのだろうか)。
彼女の足元を観察していると、多くの時間はかかとだけ浮かして残りはローファーの中に入っているような状況だったが、ときどき完全に素足を露出させ、ローファーの縁に足裏をこすりつけるようなことをしていた。その足裏の動きに合わせてローファーが揺れるたびにカタカタと音がするのだが、静かな図書館の中では私のところまでよく聞こえる。ここからは私の想像だが、足裏が蒸れて痒くなったため、それを紛らわすためにこすりつけていたのだろう。
さらに、30分くらい見ていた中で2回ほど、ローファーを完全に脱いで、裸足の足を床に直接置くようなスタイルになったことがあった(足指を内に曲げるようなスタイル)。そのとき完全に露わになった足裏を見ると、さすがに女子高生らしい、傷や変形の全くない綺麗なものだった。小ぶりな足裏からつながる丸まった5本の指もまたコロコロと丸みを帯びていて可愛らしいことこの上ない。その可愛い足を、皆が土足で歩き回っていたであろう床の上に直に載せているのだ。足裏がゴミで汚れるということよりも、裸足になって足を開放したいという願望のほうが勝っていたのだろう。
もっとも、直置きの時間はそれほど長くは続かず、再びローファー半脱ぎのスタイルに戻っていたので、その一部始終を見届けてから、私も図書館を後にした。